夢のスタメン

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夢のスタメン

2030年秋のことである、タートルズはリーグ優勝までのマジックを“1”と追い込んでいた。 今夜のツナカンズとの戦いを制すれば、まずはリーグ優勝が叶うことになる。 そんな大事な試合に俺がスタメンなんて・・「こんな幸せなことは無い」・・なんて正直俺は思わない!   だって、昨日まで二軍に居た俺が対戦相手、ツナカンズの浅岡投手を打てる筈が無い! これは明らかに森監督のキャスティングミスだ! 年俸600万円の俺をあまりにも買いかぶり過ぎている。 実況アナ「解説の菅野さん、タートルズは一番に山本を持ってきましたね」 解説者「山本って今日二軍から上がってきたところですよね・・この大事な試合に森監督も思い切ったオーダーを組みましたよね」   思い切ったのではない、監督の頭の部品は完全に狂っている。張本人の俺が、つまりその山本が言うのだから間違いない! 「二軍ではここ二週間の打率が4割7分と当たっているようです」 「そうです・・その間、ホームランも2本打っているみたいですね⁉」 「今シーズンのキャンプでは菅野さんもOBとして視察されたんですよね⁉」 「行きましたけどね・・あまり目立った選手じゃなかったので、正直気が付かなかったですね・・記録を視ても身長182センチで体重90キロと、近頃の野球選手じゃ普通ですよね⁉」  解説者の菅野さんが言っている通りだよ、俺って今年で二年目だけど二軍でも、全く目立たない存在だった。でも来年まで契約が残っているんで、辞めたくても辞められない、ホント駄目な奴さ。  そんなロクデナシが、どうして一軍に呼ばれたかって? たまたまここ二週間の成績が良かっただけさ! でも心配しなくても、この試合が終わった明日には、きっちり二軍に戻っていると思うよ。
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