道草してコーラ

2/3
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 帰り道。 「くそー、コミセンが来なかったら、おれ男になってたのに」  悔しそうに言って石ころを蹴飛ばしたペーに、 「今日はポテチ持ってないの?」  って聞いたら、 「持ってない。おれ、ダイエット始めたからな」  って、言われた。 「まーた、お前、だれか好きになったんだろ?」  ミヤオの冷やかしに、 「ちがうよ。おれも始めんだよ」  って、ペーがこたえる。 「なにを?」 「キラキラした青春だよ、キラキラのキラキラの青春」 「バッカ! 無理だよ、無理」 「分かんねえだろ。なんでもやってみなきゃな。おれは、立ちはだかる壁を恐れない男になるんだよ」 「ビビッてたじゃねえか」  ミヤオが茶々を入れたら、 「おれさ、一学期の終わりに天体観測同好会に入ったろ?」  って、急になんか真剣な顔になってペーが言った。 「あー、そういやそうだったな。あれ、ちゃんとやってんの?」 「夏休みにちょっとだけやったけど、あんまり活動はないかな」 「へえ」 「でさ、あそこに入るまで、わざわざ星を見ようとか思わなかったわけじゃん」 「まあ、ふつうはな」 「うん。でさ、二回だけだったけど、なんかいいなあって思ってさ」 「星が?」 「ちがうよ、バカだなあ。なんか新しいことするのがだよ」 「はあ」  ただ星を見ただけで、ペーが勝手に成長してる。 「で、気づいたわけ。『なんもねえ、なんもねえ』って言ってても、なんもねえって」 「なにそれ?」 「だからやるよ、おれは。ダイエット」  決意を固めた顔で言うペーに、 「その前にテスト勉強だな」  って、ミヤオが言って、笑った。 「じゃあ、またあした」 「じゃ」 「じゃあ」  分かれ道に来て、ペーと別れた。 「まあ、あいつが痩せる気になったんだから、いいんじゃね?」  ふたりになった帰り道で、ミヤオが言った。 「いつまで続くかな?」 「さあ? でもどっちにしろ面白いよな」 「たしかに」  言って笑ったら、ミヤオも笑って、 「まあ、おれもちょっとテスト勉強がんばってみるわ」  って、言った。 「そういやミヤオ、塾に行くとか言ってなかったっけ?」 「夏期講習だろ。二週間だけ行ってたけど、なんも面白いことなかったわ」 「夏期講習なんて面白くないだろ」 「まあな。でもさ、そういや言ってなかったけど、鈴木と越野が来てたんだよね」 「マジで?」 「マジで」 「でさ、鈴木はまあいいんだけど、越野、ヤンキーのくせになんで来てんのかなって思って聞いたら、あいつ『先生になりたい』とか言ってんの」 「マジで?」 「マジで」 「無理だろ」 「かもな。でもあいついま学校マジメに来てんじゃん。なんかすげえなーって思ってさ。塾でしゃべったらけっこう良いヤツだったし、よく分からんけど、頑張ってほしいなーとか思っちゃったわけ」 「はあ」 「でさ、おれも色々とあって、マンガ描こうと思ってるんだよ」 「あー、忘れてた。マンガ家だったな、夢」 「忘れんなよ」 「まあ、がんばれよ」 「でさ、ぺーに原作を書いてもらおうと思ってんのよ」 「あー、たしかに。ぺーなら、面白い話を考えられそうだもんな」 「それでさ、描いたら読んでくれね? ガラシはマンガに詳しいからさ」 「オッケー」 「じゃあ、またあした」 「じゃあ」  って、ミヤオとも別れた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!