道草してコーラ

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 帰り道。 「くそー、コミセンが来なかったら、おれ男になってたのに」  悔しそうに言って石ころを蹴飛ばしたペーに、 「今日はポテチ持ってないの?」  って聞いたら、 「持ってない。おれ、ダイエット始めたからな」  って、言われた。 「まーた、お前、だれか好きになったんだろ?」  ミヤオの冷やかしに、 「ちがうよ。おれも始めんだよ」  って、ペーがこたえる。 「なにを?」 「キラキラした青春だよ、キラキラのキラキラの青春」 「バッカ! 無理だよ、無理」 「分かんねえだろ。なんでもやってみなきゃな。おれは、立ちはだかる壁を恐れない男になるんだよ」 「ビビッてたじゃねえか」  ミヤオが茶々を入れたら、 「おれさ、一学期の終わりに天体観測同好会に入ったろ?」  って、急になんか真剣な顔になってペーが言った。 「あー、そういやそうだったな。あれ、ちゃんとやってんの?」 「夏休みにちょっとだけやったけど、あんまり活動はないかな」 「へえ」 「でさ、あそこに入るまで、わざわざ星を見ようとか思わなかったわけじゃん」 「まあ、ふつうはな」 「うん。でさ、二回だけだったけど、なんかいいなあって思ってさ」 「星が?」 「ちがうよ、バカだなあ。なんか新しいことするのがだよ」 「はあ」  ただ星を見ただけで、ペーが勝手に成長してる。 「で、気づいたわけ。『なんもねえ、なんもねえ』って言ってても、なんもねえって」 「なにそれ?」 「だからやるよ、おれは。ダイエット」  決意を固めた顔で言うペーに、 「その前にテスト勉強だな」  って、ミヤオが言って、笑った。 「じゃあ、またあした」 「じゃ」 「じゃあ」  分かれ道に来て、ペーと別れた。 「まあ、あいつが痩せる気になったんだから、いいんじゃね?」  ふたりになった帰り道で、ミヤオが言った。 「いつまで続くかな?」 「さあ? でもどっちにしろ面白いよな」 「たしかに」  言って笑ったら、ミヤオも笑って、 「まあ、おれもちょっとテスト勉強がんばってみるわ」  って、言った。 「そういやミヤオ、塾に行くとか言ってなかったっけ?」 「夏期講習だろ。二週間だけ行ってたけど、なんも面白いことなかったわ」 「夏期講習なんて面白くないだろ」 「まあな。でもさ、そういや言ってなかったけど、鈴木と越野が来てたんだよね」 「マジで?」 「マジで」 「でさ、鈴木はまあいいんだけど、越野、ヤンキーのくせになんで来てんのかなって思って聞いたら、あいつ『先生になりたい』とか言ってんの」 「マジで?」 「マジで」 「無理だろ」 「かもな。でもあいついま学校マジメに来てんじゃん。なんかすげえなーって思ってさ。塾でしゃべったらけっこう良いヤツだったし、よく分からんけど、頑張ってほしいなーとか思っちゃったわけ」 「はあ」 「でさ、おれも色々とあって、マンガ描こうと思ってるんだよ」 「あー、忘れてた。マンガ家だったな、夢」 「忘れんなよ」 「まあ、がんばれよ」 「でさ、ぺーに原作を書いてもらおうと思ってんのよ」 「あー、たしかに。ぺーなら、面白い話を考えられそうだもんな」 「それでさ、描いたら読んでくれね? ガラシはマンガに詳しいからさ」 「オッケー」 「じゃあ、またあした」 「じゃあ」  って、ミヤオとも別れた。
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