明日には枯れる白いアザレア

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明日には枯れる白いアザレア

※ 『仕事決まったから誇ってくれていいよ』 『どこ?』 『●●のCDショップ』 『おめでとう』 『俺の知識が勝った。お祝ってくれてもいいよ』 『さっきからなんだそれ』  仕事終わり、二十二時半を過ぎた頃に星を迎えに行った。季節は十二月に入り雪もちらつく中、指定されたコンビニの外でわざわざ待っていた星は「ガラス曇ってて外見えねえんだもん」と車に駆け込んだ。時期的に少し着ぶくれをして漸く人並み程度のサイズになった体を擦って、暖房に体を寄せていた。 「まあ、おめでとうだよな」  まだシートベルトを締める気配のない星を待ち、体を捻って後部座席に避けていた荷物に手を伸ばした。その音だけには目ざとく反応する星にやはり獣味を感じた。 「なにこれ」 「お祝い」  手渡すと思った通りの反応をする。紙袋の中から顔を出しているのは一本だけの白い花で、その下、紙袋の中には箱に入ったケーキがあるが、主役顔で現れた花に辟易として気が付いていないのかもしれない。 「なにこれ」 「アザレア」 「なんで」 「お祝い」 「うれしくねー」 「業者に落ちてるアザレアがないか聞いてあったから持ってきてもらったもんだから、気負わなくていいぞ」 「明日枯れる」 「せめて水には挿せ」 「俺が花喜ぶように思う?」 「全く思わない」 「ほら嫌がらせじゃん」 「いいんだよ。さっさとシートベルトしろ」  もう殆ど車が発進してからシートベルトに手をかけた星が揺れて膝から落ちそうになった紙袋を支えてやっと、中身の箱に気が付いた。「こっちはいいものであれ」と正直な言葉を吐いて、開けた箱に歓声をあげたのも想像していた通りだった。 「こっちは嬉しい。フォークついてないの?」 「ここで食うな」 「なに、まだにおい気にしてんの」 「お祝って欲しいんだろ?」  その瞬間の表情は想像しておらず、随分とそれらしい、可愛い反応をすると思った。
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