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「2027年が待ち遠しい……。早く素数の時代を生きたい……」
先輩は憂いを帯びた表情で遠くを見つめている。
私は大きく息を吸った。
ありったけの息を吹き込み、楽器を鳴らす。
Fー!!!
どの穴も指で塞がない、「開放」の音。
「うるさい!」
モモ先輩の怒号。
「ちゃんとして。真面目にやらないなら1stからおろすよ?」
「す、す、すみませんでした。ちゃんとやります!」
私は直立して大声で謝った。
コウキ先輩はというと、すました顔でリードの位置を調整していた。
「先輩の数字へのこだわり、どうにかしてくださいよ。いつまでたっても練習できないじゃないですか!」
私は声に怒りを含ませ、小声で言った。
先輩は、リードを見つめたまま言い放つ。
「無理だ。俺は素数をこの世の何よりも愛しているからな」
【完】素数(数字)フェチ
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