割り切れない

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 私はため息をついた。2nd(セカンド)3rd(サード)の同級生が先輩とピッチやリズムを合わせている音が聞こえる。対する1st(ファースト)の私たちは、一つも音を出していない! 「割り切れない数が好きってことですね。わかりました。練習しましょう」  こらえきれず、私はメトロノームに手を伸ばした。 「割り切れない数が好き? 俺がいつそんなことを言った? 割り切れる関係だけが全てじゃない。そう言ったんだよ」 「どっちでもいいです。練習しましょう」  私はメトロノームの重りをストッパーから外した。カチカチカチカチと一定のリズムが刻まれる。 「138か。惜しい。あと1多くしていいか?」 「は? 何言ってるんですか。138が指定のテンポですし、そもそも、アナログのメトロノームに1の目盛りなんてありませんから!」 「なんてことだ! 実にもどかしい!」 「もう!」  私は机を叩いた。先輩がびくっと肩を震わせた。  本当は先輩を叩きたかったが、持っている楽器を落としたら危ないので我慢した。
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