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入場を取り消してもらい、商店街に着いた。おばちゃんがフランクフルトを温めている。
あたしはフランクフルトを二本買って一本を千紘くんに手渡した。
「お腹すいてたんだね。はいっ」
「ううん、俺はいいんだ。凛子に食べて欲しくて……」
? う、うん。
あたしは思いきりフランクフルトを齧った。
と、
「っあぁ!」
千紘くんの悲鳴が漏れる。
「ど、どしたの?」
「齧らないで。咥えてて欲しいんだ」
………………。
あたしは今、最愛の人の前でフランクフルトを口に突き刺している。
「ぢびどぐんどじゃべでだいんだでど(千紘くんと喋れないんだけど)」
千紘くんは静かに、そして心の底から嬉しそうに首を振った。
「ううん、凛子、愛してる」
そう言って、あたしの恥ずかしいショットをスマホに収めた。
「……ば、ばだぢぼばいじでどぅ(わ、わたしも愛してる)」
千紘くんはもう一本のフランクフルトをあたしに手渡した。
「凛子、もう一本、咥えられる?」
……もう、一本……すか。
いや、あたし、愛に生きる。
あたしの口から左右に二本フランクフルトが伸びている。
「……ば、ばだぢ、バーベドゥダイダーびだいぢだっでだい?(あ、あたし、サーベルタイガーみたいになってない?)」
千紘くんは首を激しく振ってあたしを抱きしめた。
「愛してる、凛子」
「ばだぢぼ(あたしも)」
ーーー沙苗ちゃんがこっちを見て、眉を寄せている。
「……な、何をしているのかね? 凛子くん」
あたしは学校でちくわを咥えて机に頬杖をついている。
「ぢぐばぐばべでんど(ちくわ咥えてんの)」
「は? なんだって?」
「ぢぐばぐばべでんど!(ちくわ咥えてんの!)」
「は? なんだって?」
「ぢ、ぐ、ば!(ち、く、わ!)」
沙苗ちゃんがやれやれと両手を挙げて降参のポーズをとった。
良いのだ。
あたしは、愛に生きるのだ。
LINEが来た。
『ちくわ咥える凛子かわいいよ。明日、バナナだったら嬉しいな』
愛に、生きるのだ。
了
【フェチ:長いもの咥えさせるイケメン】
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