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千紘くん。
ここ星城学院きってのイケメンである彼は、いったい誰と付き合うのか。女子の間では、毎週必ずあがる話題であった。
バスケ部では182cmの高身長を活かして一年生からレギュラーを掴み、テストでは学年三位内を必ずキープ。移動教室で階段につまづく女子をさりげなく支え、嫌味は何ひとつ感じさせない。おまけに、今をときめくイケメン俳優たちを全て足し、AIが配合率を決めたのかというほど完璧な顔立ちときている。
完全体すぎる千紘くんに告白できる同級生は皆無であった。そんな高一の千紘くんに初のアタックをかけたのが、三年の唯香先輩であった。
唯香先輩といえば、星城学院の看板を背負ってたつ現役のモデルであり、テレビにも何度か出演しながら、K大の合格判定はAという才女でもある。
「唯香先輩がコクったって」
「そっか。やっぱあのレベルで落ち着くわけね」
約一年に渡ってあたしたちの話題をさらった千紘くんの彼女は、唯香先輩で決まったものだと思った。
バレンタインデーの一週間前、あたしたちは帰りながら「世の中は美女とイケメンが得をするようにできている」と愚痴るしかなかった。口いっぱいに頬張ったアメリカンドッグがやけに甘ったるく感じた。
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