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千紘くんの肩にそっと寄りかかる。
やっぱりバスケ部のエースだけあって、筋肉で覆われた肩周りは硬い。それでも、あたしは幸せの絶頂だ。肩に釘が生えていても気にしない。たとえこめかみが血だらけになろうとも。
「はい、凛子」
差し出されたままに、千紘くんに渡されたアイスクリームを頬張る。
細長いソーダ味のアイスクリームは、青春の酸っぱさがした。
隣で愛おしそうにあたしを見てくれる。可愛くもないあたしを、こんなに愛おしそうに……。
ソーダ味のアイスクリームを齧る。奥歯がキンと鳴るが、そんなの関係ない。あたしの脳は今、甘さしか伝わってこない。
あたしは千紘くんに上目遣いで向いた。すると、千紘くんは少し悲しそうな顔をしていた。
しまった。上目遣いは余計だったか。
「……そんなに、急いで食べなくていいよ。ゆっくり、こう、なんていうか溶かしながら、さ。無理に齧ったら歯が痛くなっちゃうよ」
神様より優しい。
あたしが言う通りにアイスクリームを咥えると、千紘くんはあたしの頭をそっと包み、胸元へ引き寄せてくれた。
あたしは、三時間後に死んでも悔いはない。帰ったらノートいっぱいに『幸』の字を書こう。
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