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今日も駅のベンチで千紘くんに寄り添う。肩が硬い。でも、それが心地よい。いや、ほんとに肩がチェーンソーだって構わない。ザクザクに頬が刃で切られようと、あたしは幸せに違いない。
もう、何をされたっていい。絶頂の最高なのだ。ふと、あたしは千紘くんに言った。
「あたし、千紘くんにできること何でもやってあげたい」
千紘くんは少し逡巡するような顔を見せ、小さくはにかんだ。
「ひとつだけ、お願いがあるんだ」
あたしは目を輝かせた。
「うん! お願いされる方が嬉しい!」
「じゃ、じゃあ、ちょっと待ってて!」
千紘くんは子供のように目を輝かせて駅の売店に走っていった。
……?
何やら千紘くんは店員さんと話をしている。そのままうなだれるように戻ってきた。
「……なかった……」
落ち込んでいる。
「な、何がなかったの? あたし、入荷してくれって問屋にでも頼みにいくよ!」
「フランクフルト。いつもは売ってるのに」
「フランクフルト? それなら、駅前の商店街にあるのに。食べたいの?」
また千紘くんの目に輝きが戻る。
「駅前の商店街にあるんだ! そっか、うん、そっかぁ」
千紘くんはめちゃくちゃフランクフルトを食べたそうにモジモジしている。
あぁ、可愛いところもある。コアラ百頭分より可愛いよ。
「出ようか?」
「うん!」
千紘くんは刑事ドラマみたいに階段を駆け下りていく。
「待ってー」
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