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二日目 第九話 黄色い防護服
ん!?
その時、俺の視界を予想外のものが横切った。
建物の陰に誰か立っていた。
ゾンビではない。まっ黄色の感染防護服を着てた。あれは外から、壁の外から入ってきた人間だ。
良かった。ようやっと生存者の救出作戦が始まった、あれは救助隊だな。
そう思って俺はホッとした。
しかしこれまで『壁の外』の連中の、俺たちに対する振る舞いは決してフレンドリーなものではなかった。それを思うと一抹の不安も感じた。
「葵、ちょっと停めてくれ」
「え、何?」
トラックはキキーッと音を立てて急停車した。
「どうしたの? 忘れ物?」
「いや、違う。防護服姿の人間が見えたんだ。救助隊かもしれないから行って話をしてくる」
「はあ!? バカじゃないの? そんな奴ら信用できないわよ。銃でも持ってたら、あなたゾンビだしすぐに撃たれてしまうわよ」
「これだけベラベラ言葉しゃべってる奴をすぐに撃ちゃしないだろ。それに俺は撃たれても生きてる人間ほどダメージは大きくない。奴らが撃って来たら逃げて来るよ」
「蜂の巣みたいにされたらどうすんのよ!?」
「そうなったら君達だけで逃げてくれ」
「何て無責任なこと言うのよ! そんなこと言うんだったら私が行くわ」
葵はオープナーに手をかけて運転席のドアを開けようとする。
「や、止めてくれ。俺が行く、俺が行く。お前が撃たれたら元も子もない」
そんな内輪もめをしてるうちに、トラックの後方から二人の男達がこちらに向かって歩いて来るのがドアミラーに映った。
「ほら、どっちにしても奴らの方からこっち来るよ。とりあえず話してくる」
そう言い捨て、葵が止める間を与えず助手席のドアをパッと開けて路面に飛び降りた。
「気をつけてね! 危ないと思ったらすぐに戻ってくるのよ! エンジンかけたままにしとくから!」
葵が叫んでいるのを背中で受けて、俺はトラックの後方200メートルほどにいる黄色い防護服姿の二人に近づいて行った。
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