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二日目 第十話 生存者狩り
「止めろ! 撃つな!」
思わず叫んだが、それぐらいでこいつらが止まるわけもない。
パアン! パアン!
銃声が銀杏並木に鳴り響いた。
乾いた銃声……などとよく表現されるが、目の前で発砲されるとかなりの破裂音だ。耳がキーンとなるぐらいの衝撃がある。俺は思わず耳を押さえて腰を屈めた。
しかし、この距離で拳銃では当たらないと判断したのだろう、最初に俺に銃を向けた男が、拳銃からライフルに持ち替えた。
こ、これはまずい。
「止めろおおおお!」
俺は叫びながら、引き金を引こうとしている男に駆け寄り、銃身をつかんで無理矢理違う方向に向けさせた。
それでも男は引き金を引いた。
バシュッ! という、拳銃とはまた違う銃声が響いたその途端、俺は左手を明後日の方向に強く引っ張られて姿勢を崩し、路上にひっくり返った。
何だ? 弾が身体のどこかに当たったのか……痛くないから分からない。便利なのか不便なのか分からん身体だ。
俺はアスファルトの上に腹ばいになりながらトラックに向かって力一杯叫んだ。
「逃げろおおおお!」
しかしその時、トラックのエンジンがぐおーんと高らかに咆哮したかと思うと、すごい勢いで俺達がいる方向にバックし始めた。
馬鹿野郎、それじゃ逃げるのと反対方向じゃねえか! 前進と後退と間違ってんじゃねえよ、葵!
叫びそうになったが、トラックの後の荷台に載っている物が目に入った瞬間、葵の意図が分かった。
すまん、馬鹿野郎じゃねえ、お前は天才だ、葵。
俺は巻き添えにならないように路面をごろごろ転がって路肩の方に避難した。
アクセルを床まで踏み抜いているのだろう。トラックはバックのままどんどんこっちに近づいてくる。エンジンがレブに当たって悲鳴のような音を立てている。
男達は銃を撃つべきかトラックを避けるべきか迷ったまま、まだ路上に立っている。
トラックはそこに突入して男達を蹴散らす……のかと思いきや、その少し手前でタイヤを鳴らして急減速した。
そう。
トラックの荷台には古新聞、古雑誌、古コピー用紙、段ボールなどが山のように積んである。それらの物体がいっせいに慣性の法則で後にすっ飛び、荷台の後端なんかはぶっ壊して、トラックの後方にぶちまけられた。
古紙の絨毯爆撃だ。
男達はすねの辺りに古雑誌の束の直撃弾を食らって路面にひっくり返り、その上を無数の紙と段ボールが幾重にも覆った。
ぐっじょぶだ! 葵。
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