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「乗って! 早く乗って!」
停まったトラックの運転席から葵が顔を出して叫んでいる。
男達は段ボールの山の中でごそごそもがいているが、これぐらいでは死にゃしない。そのうち立ち上がって撃ってくるだろう。
急げ!
俺はよろよろと立ち上がって、空になったトラックの荷台の上に這い上がった。
トラックが動き出した瞬間、荷台から転げ落ちそうになり、とっさにそこにとぐろを巻いてた荷造り用のロープをつかもうとしたが、あれ? つかめない。
慌てて右手でロープをつかみ直して事なきを得たが……見ると俺の左手の親指は付け根から綺麗に無くなっていた。
さっきライフル銃をつかんだ時、左手が銃口にかぶってたんだろう。そのまま発砲されて指が吹き飛んだのか。
普通なら血が噴き出すところだが、出血というほどの血も出ていない。まあ頭を吹き飛ばされなくて良かったし、トラックに着弾しなくて良かった。どうせもう死んでるんだ、指の一本や二本、くれてやるさ。
陽奈が後の窓からこちらを心配そうに見ている。
笑顔で手を振ってやったら、ぷいっとした表情で前を向いてしまった。何だ? 何かまずかったか? 女の子は難しいな。
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