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研究室に持って上がる荷物を整理していたら陽奈が寄ってきて俺の脇を小突いた。
「山野先生、ダメじゃないですか。葵先生泣かしたら」
「あ、ああ」
「さっきも葵先生、山野先生のことをすごい心配してたんですよ」
「そうか」
「トラックをバックさせる時なんて『このやろおおお!』って絶叫してたし、その後も怪我したんじゃないかしら、怪我したんじゃないかしらって何度も言ってたし、それで私が後見たら山野先生、笑って手振ってるしずっこけました」
「陽奈ちゃん、余計なことバラさないで。さあ行きましょ」
「はーい」
彼女達を助けるつもりが厄介ごとばかり引き起こしてる自分が情けなくなってきた。小さくなりながら、俺は彼女達の後をとぼとぼついて行った。
幸い、理学部棟の正面辺りにはゾンビはおらず、スムースに3階までたどり着いた。
3階の通路の端の方にいたゾンビは……通路の隅に座り込んでいるように見える。もう細胞が減ってきて動けなくなってきているのか。逆の方向にいた白衣のゾンビも、その後は姿を見ない。こちらもどこかでへたり込んでしまってるんだろうか。
気の毒ではあるが……葵や陽奈がこの辺をうろうろするためにはその方が安全だ。
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