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二日目 第十一話 生きてる?
無事に研究室にたどり着いた俺たちは、大した移動距離でもなかったのに、途中の出来事のせいかぐったり疲れていた。
パソコンを起ち上げる前にお茶でも飲んで一息入れよう。
俺の左手は葵に手当てされ、丁寧に包帯を巻かれてしまった。でも、もう文句は言わず、ありがたく巻かれておこう。
「あいつら、ここにも来るかしら?」
ぼさぼさ髪が直った葵が心配そうに言う。昨日陽奈がコンビニから持って来たコスメ用品を二人でシェアしたようで、髪も整えメイクもきちんとし直して美人度がまた一段上がっているが、その表情は冴えない。
「そうだな、連中は明らかに生存者を探し出して抹殺しようとしていた。おそらく今も大学の建物をしらみつぶしに探し回ってるだろうし、いずれここにも来るだろうな」
「この建物って、逃げ出せるような出口はあるの?」
「通路の端まで行って非常口を出れば外に非常階段があると思うが、俺がハンターなら、間違いなくそっちにもメンバーを配置して待ち伏せするな」
「まあ、そうするわよね」
「建物内でどこかに隠れるという手もあるだろうがリスクが高い。だから連中がこの建物に到着する前には逃げておかないといけないな」
「いつ頃来るかしら?」
「大学構内は広いし、捜索すべき建物はいっぱいあるし、ゾンビもウロウロしてるし……まあ、そんなにすぐには来ないだろうが、奴らも素人じゃあるまい。二三日中には来るだろうな」
「あなたはいつまで動けるの? 確か、ゾンビが動けるのは長くて1週間ぐらいって、あなた自身が言ってたけど」
「正確には分からんが、マウスの結果から推測すると、まあそんなもんだろう」
「じゃあ、私はあなたが動けなくなるまでは一緒にいるわ」
「いや、だめだろ。そんな危険なことさせられん」
「危険なことはさせられんって、どの口で言ってるの?」
そう言われると俺は反論できない。葵をこんな事態に巻き込んだのは間違いなく俺だ。
「いや、すまん……でも今、俺が言ってるのは」
「私も、別に帰りたい所もないし、壁に近づくのが危ないなら、お二人と一緒にいたいです」
そこに陽奈も加わってくる。
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