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「ええっと、話を元に戻すとだな……何の話だったっけ……ああそうだ、だから俺たちはここに長居はできん。早く外部に連絡を取って生存者がいるっていうことを広く認知させ、安全に壁の外に出られる方法を探らないと、俺はともかく、君達の命が危ない」
「壁の外に出るならあなたも連れて行くわ」
「いや、だから、それが無理なのは葵も分かってるだろ。俺の身体からはウイルスが拡散してる。俺が外に出たら間違いなく新たなパンデミックを引き起こすことになる。俺は壁の内側でこのまま消えて行くべきなんだよ」
「……本当に無理なの? 元の身体に戻る方法はないの? そのノートパソコンに何か手がかりがあるんじゃないの?」
「それは無理だろ。発症した時点で既に全身のほとんど細胞のゲノムが書き換わってる。どんなに中和抗体を大量に使ってウイルスを駆逐しても、書き換わった細胞のゲノムを元に戻すことはできん。それに俺の心臓はもう止まってるしな」
「……本当に心臓止まってるの? ちゃんと診断したの?」
「ああ、自己診断だけどな」
「……私がもう一度診るわ。脱いで」
あーあ、やっぱりこういう展開になるか。まあどうせ葵は言い出したら聞かない。とりあえず気が済むまで俺の死体を診察させてやろうか。
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