二日目 第十一話 生きてる?

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「とりあえず、これやりましょう」 葵が隣の部屋から持ってきたのは小型のAEDだ。心臓が止まりかけてる時に蘇生のために使う、いわば電気ショック装置だ。 しかしAEDは、本人が既に意識を失ってる状態で使うのが前提だ。意識がある状態で使うと激痛と衝撃でかえって死にそうになる。 「い、いや、俺、意識あるんだけど!」 慌てて主張するが、葵は聞いてくれない。 「しょうがないでしょ。あなた男なんだし我慢しなさい」 「いや、そんなの男も女も関係ないだろ! 性差別良くねえよ!」 「先生、往生際が悪いですよ」 陽奈も突っ込んでくる。 「いや、だから俺はもう既に往生してるんだよ!」 「はい、つべこべ言わずそこに横になりなさい。たぶん心室細動の状態になってるから、AEDやったら普通の心拍に戻るかもしれないでしょ」 「そこに横になれって、この床にか?」 「仕方ないでしょ。嫌だったらタオルか何か敷きなさいよ」 仕方なくタオルを何枚か床に敷いてその上に横になった。葵は手際よく俺の胸をはだけさせ、電極を貼り付ける。 「心臓がちょっとだけ動いてるんなら、かえってAEDしない方がいいんじゃないのか? よけいに心停止にならないか」 「はいはい、死んでる人はべらべらしゃべらないの。このAEDに簡易心電図がついてるから、ボタンを押すかどうかはそれを見て決めたらいいでしょ」 必死に抗う俺を葵は苦笑しながら受け流す。 「分かった。分かったけど、やる時にはやるって言ってくれよ。いきなりやるなよ。心の準備が要るからな」 「ほら、もう、しゃべってたらノイズで心電図見れないじゃない。いい加減もう観念して黙りなさい」 とうとう黙らされてしまった。
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