二日目 第十二話 半分生きてる

4/4
前へ
/220ページ
次へ
AEDをやって効果がある心電図ではなかったため、無事に胸から電極を外してもらえた。ああ、良かった。 でもこの一件で、何故、自分がゾンビなのに理性を保ってるかの謎も解けた。 そうか。俺はいわゆるハーフゾンビなんだ。 俺の身体の中は、ゾンビ化した部分とそうでない部分の両方が入り交じっている。何というか、ハイブリッド状態と言うべきか。 心臓では、ゾンビ化せずに残った心筋細胞が活動レベルを落としながらも時々動いている。葵の診察結果では呼吸も少ししているらしい。ということは全身にわずかながら酸素が供給されているということだ。 脳でも、心臓と同じように一部の細胞がゾンビ化せずに残っていて、普通に酸素を消費しながら働いているのだろう。だから普通に考えることもできる。 しかし。 しかし、だ。 このハイブリッド状態はそう長くは保たない。謎が解けると同時に、そのこともはっきりしてしまった。 何故かと言うと。 ゾンビ化した細胞は、周りの細胞を共食いしながら活動している。その際にゾンビ化した細胞とゾンビ化していない細胞のどっちかを選ぶような能力はない。 ゾンビ化した細胞だって必死だ。自分が生き延びるためには、選り好みなんかせずどんどん周囲の細胞を食べざるを得ない。となると、ゾンビ化していない細胞は一方的に食われて減って行くばかりで、その分、減少スピードは速い。 もし俺の理性や思考力が、ゾンビ化していない細胞のみに支えられているのであれば、それはかなり速いスピードで失われて行くことになる。 つまり俺の理性が保たれている時間は、思っていたよりもずっと短い。 というか今も俺の頭の働きはどんどん落ちて行っている……そう、もう分かってる。しっかり自覚してる。 彼女達は俺の心臓がわずかながら動いていることを喜んでくれているが、いずれ俺は外にいるゾンビ達と同じ状態になる。 そしてそれはおそらくそんなに遠い先のことではない。明日か、明後日か。それとも今日中にもうアウトか。 急に理性を失って彼女達にかぶりつくとか、そういうのは無しにしたい。どうせかぶりつくなら太ももに……いや、だからそんなこと考えてる場合じゃないって。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加