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二日目 第十三話 指輪とパスワード
「あなたの身体を元に戻すヒントがあるかもしれないわ。とにかくそのノートパソコンを起動してみましょう」
葵は胸のポケットからUSBメモリーを取り出して言った。
まあそんなヒントなんて存在しないけどな……などとは言わず、葵に合わせた。
「そうだな。やってみよう」
俺はオフィスチェアに座り直してノートパソコンを開き、葵からUSBメモリーを受け取ってUSBポートに刺した。
スイッチを入れると微かなディスクの作動音がして、昨夜は何も表示されなかった液晶にログイン画面がパッと表示された。やはりこのUSBがロックになってたんだな。
しかしこのログイン画面は見慣れたOSのものではない。文字だけのシンプルな画面。LINUXか何かだろうか。
IDの入力はなく、求められているのはパスワードだけだ。
パスワードは……ああ、そうだ葵が知ってるんだ。
「葵、パスワードを教えてくれ」
「……あなた本当に覚えてないの?」
「え? そんなの全然覚えてねえよ」
「面倒くさい人ねえ。あなた右手に指輪してるでしょ? それ外してみて」
「指輪?」
見ると、血の気のない俺の右手の……薬指に、確かに指輪がはまっている。
俺、指輪なんてしてたんだ。今、初めて気がついた。
プラチナかな。石や飾りは何もついてない、白銀色のシンプルな指輪だ。
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