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ずっと着けっ放しにしてたのか、ちょっと引っ張ったぐらいでは抜けない。ぐりぐり回してどうにか外す。
「その指輪の内側を見て」
言われた通り、指輪の内側を見ると、何やら小さな文字が刻まれてる。
「K&A2014Apr27」
そう書いてある。何? これがどうしたの?
葵を振り向くと黙ったままジッとこちらを見てる。
何だ? あ、そうか。これをパスワードにしてるのか。
しかし「K&A」って……圭&葵ってことだよな。
「2014年4月27日」っていう日付は……婚約した日か。
要するにこれ……婚約指輪だな。
ついチラッと葵の手を見てしまった……予想通り、葵の右手の薬指にも同じ指輪が存在していた。ひっそりと。
「何だ、二人ともちゃんと婚約指輪着けてるんじゃないですか。らぶらぶじゃないですか。ぶーぶー」
気付いた陽奈がふざけた調子で冷やかす。でもこれは冷やかされてもしょうがない。
俺自身が山野君に突っ込みたい。小一時間突っ込みたい。
婚約解消したんじゃなかったのかよっ!
「私も、もちろん一時は全く着けてなかったけど、普通に二人で会うようになってからちょっと着けてみたら、そのうちこの人も着けて来るようになったのよ」
「ふうん。私、ここにいたらすごいお邪魔ですね」
陽奈が口を尖らせる。
「いいのよ。指輪は単なる指輪だから」
いや、単なる指輪って……婚約指輪なんか引っ張り出して来てまた着けてたら、完全に元サヤじゃねえか。
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