二日目 第十三話 指輪とパスワード

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さて、話を戻そう。 死を覚悟した俺はまず、ウイルスがバイオテロとして実際に使用されゾンビパニックが起きてしまった時のために、ウイルスに対する中和抗体を大量生産した。君に渡したのと同じやつだ。ざっと千人分ぐらいは作った。 そして少しでも安全性を高め、生物兵器としての危険性を減じた、いわば「改良型」ウイルスを早急に開発すべくこの研究室に閉じこもった。 しかし事態はさらに良くない方へと動いた。いつかそうなるんじゃないかと危惧してたことが現実になってしまった。 つい1週間ほど前、テロリスト達から、タイトルも内容も空のメールに画像ファイルが一つだけ添付されて送られてきたんだ。ウイルスメールじゃないぞ。その画像ファイルに写ってたのは……葵、君だ。 いや、安心しろ。別にエロい画像なんかじゃない。君が出勤しようとして朝、眠そうな顔してマンションを出てきたところ……その場面がばっちり写ってる。そういう画像だ。たぶん待ち伏せて車の中から撮ったんだろう。 つまり連中は「お前の彼女の住んでる場所も生活パターンも、俺達は把握してるんだぞ」ということを伝えてきたわけだ。要は脅しだ。 俺は焦った。 自分がボコられたり殺されたりするのは仕方ないとしても、葵に危害を加えられるのは絶対にダメだ。許せん。 しかし相手は人の命なんて何とも思ってない連中だ。何をするか分からない。といって百戦錬磨のテロリストを相手に、俺が仮に24時間葵に張り付いていたところで守り通せるものでもないだろう。 それとなくI国に探りを入れてみたが、奴らが最近のテロリスト達の動きを把握してないのは事実だった。つまり葵をネタに脅しをかけてきたのは、本当にテロリスト達の独断専行だったんだ。 最悪のパターンだ。 詰んだな。 そう思った。
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