二日目 第十四話 最後の実験

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ニュースでは太陽フレアの活動が活発になっていると報じている。都内でオーロラが見られるぐらいなら良いが、たぶん電波障害や停電ぐらいは起きるだろう。 そうなると必ずテロリストの奴らが動くはずだ。奴らは焦っている。動くチャンスをうかがっている。世の中にちょっとでも混乱が起これば、もう我慢できず走り出すだろう。 それは今日か、明日か……もう時間がない。奴らは必ず来る。 しかし俺の手元にはまだ危険な初期型のウイルスがかなり残っている。とにかくこれを急いで処分しないといけない。これを奪われたら終わりだ。 もちろん処分する際にも周囲に拡散しないよう最大限配慮しないといけないので、かなり時間がかかる。作業中に襲われる可能性もある。 そのために俺は最後の手段を使うことにした。 俺は今から自分にウイルスを投与する。初期型じゃねえぞ。もちろん改良型のウイルスだ。 生身の俺だと銃で一発撃たれたらもうアウトだ。しかし改良型ウイルスが全身に拡がり発症してしまえば、まあ俺はゾンビにはなるが、生身の身体よりはだいぶ打たれ強くなる。 「瀕死の重傷」ぐらいなら平気だし、生身なら「即死」するような傷を負ってもそれなりに動ける。記憶が飛んだりぐらいはするかもしれないが、理性は少なくとも3~4日は保たれる。 ゾンビになってしまえば、何か邪魔が入っても、初期型のウイルスを処分するぐらいのことはできるだろう。 初期型のウイルスを全部処分できても、A国の連中に渡した改良型のウイルスはこの世に残ってしまうが、あれを生物兵器に使っても意味はない。A国の連中はがっかりするだろうな。そしてテロリストの奴らも。 そしてここには大量の中和抗体もある。発症する前に点滴投与すれば、初期型も改良型も発症は抑えられる。バイオテロは抑えられる。 ただし、発症してしまえばどんな方法を使っても絶対に後戻りはできない。全身の細胞のゲノムが書き換わっているからだ。発症する前に点滴投与することが必須だ。 ともかく、これが俺の最後の実験だ。せっかく自分の身体と命を賭けるんだから、うまく行って欲しいもんだ。
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