一日目 第一話 心地良くない目覚め

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一日目 第一話 心地良くない目覚め

何か気がかりな夢から目が覚めると、俺は固くて冷たいタイル貼りの床の上に、丸くなって寝ていた。 足を伸ばそうとするが、ちょっと足を動かしただけで膝やら脛やらが何かに当たってしまう。 すぐ目の前には白い陶器のような物があって視界を遮っている。手で触ると冷たくてペタペタしている。 こ、これは……便器!? ト、トイレか、ここは? 何で俺はトイレの床で寝てるんだ? びっくりして起き上がろうとするが、足がパイプと洋式便器の間にはさまってて抜けない。足をあっちに向けたりこっちに向けたりしてようやっと引っこ抜き、便器を抱きながら身体を起こした。 周囲を見渡すまでもない。間違いなくここはトイレの狭い個室の中だ。照明が消えているようで薄暗い。シーンと静まりかえっており、人の気配は全くない。 何で俺はこんな所で寝てたんだ? 一生懸命記憶の糸を辿ろうとしたが。 したが。 不思議なことに、何も覚えてない。 何となく自分の手を見る。 やけに血色が悪い。爪の色は暗紫色になってしまっている。 「酸素飽和度が低いな。チアノーゼを起こしてる」 何故かそんな医学用語が頭にパッと浮かぶ。 自分が着ている物を見る。 グレーのデニムパンツに薄いタートルのセーター、それに地味なジャケットを羽織っているが、何故かパンツもジャケットもあちこちが黒く汚れてる。 何で俺はこんな所で寝てたんだ? 何度も同じ『?』が頭の中をループする。
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