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陽奈の点滴ももう終わりだ。特に副作用も出ず無事に済んで良かった。
「水しか出ないけどシャワーあるわよ。今のうちに浴びていく?」
「本当ですか!? ぜひ!」
葵に言われて陽奈の目の色が変わった。やっぱり女子高生だな。まあ3日も風呂に入ってないとなると、女の子だったらこうなるか。
「中にボディソープはあるけど、シャンプーとかトリートメントとかはないから、髪がこんな風にぼさぼさになっちゃうけど、いい?」
葵は自分のぼさついた髪をちょいちょいとつまみ上げた。これはこれで見慣れてしまうと微笑ましくて良いんだが。
「はい、大丈夫です」
陽奈がシャワーを浴びてるうちに、俺と葵で点滴のセットや救急用品をいくつか選んで荷造りした。それと、葵が「不味いわよ」と太鼓判を押した保存食もどっさり持って行くことにした。
さあ、研究室に戻るぞ。
3人それぞれがいろいろ荷物を持って当直室エリアを後にする。特に俺はサンタクロースの袋みたいなでかい布袋を肩に担いでる。実はこれ、当直室にあった替えの布団カバーなんだが、保存食をどっさり入れるのに適当な入れ物がなかったんだ。まあ見苦しいのは勘弁してくれ。
俺が先頭、真ん中に陽奈を挟んで最後に葵の順で歩く。
後に心強い先輩がいてくれるおかげで陽奈もへっぴり腰から卒業した。相変わらず武器はトイレのデッキブラシだが。
「ずいぶん堂々と歩けるようになったじゃないか」
振り向いて突っ込むと
「だって葵先生がいるのといないのじゃ全然違うもん」
言い返されてしまった。
「葵と入れ替わって俺が最後からついて行こうか?」
「止めて下さい。何か山野先生が後から来ると、かえって怖いです」
「どういう意味だよ、そりゃ」
「だって山野先生ゾンビだし、そのうち後から襲って来るんじゃないかと」
「信用ねえなあ」
俺がふくれると、
「そりゃ、そんなゾンビ顔してたら信用されないわよ」
葵に笑顔でトドメを刺されてしまった。
まあそんな感じで3人でしゃべりながら歩いていると、来る途中のあのびくびくした緊張感が嘘のようだ。
真っ暗な地下通路も、もう平気だ。開け放したままにしておいた出口から差し込む光が徐々に大きくなり、俺達はゴミ集積場まで戻ってきた。
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