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「とても綺麗な夜空だ。さすが八郎、俺の好みをよく分かっているね」 「あなたのために作ったわけではありませんが、褒められるのは悪い気はしません。ありがとうございます」  ずっと見ていたいが雲が溶け出し星が隠れ始めた。スプーンを差し入れアイスを含めば、爽やかな甘さが口いっぱいに広がる。コーヒーと共に吸い上げた星屑が口内でぱちぱちと弾け、ほろ苦い冷たさが全身を癒やす。  外出で疲れた体が元気になり、食べ終われば自然と背筋が伸びた。 「このフロート、とっても美味しいです」 「素敵な新作じゃないか。俺の分はないのかい?」 「あなたは水で充分です」  八郎とユウスケは遠慮せずに正直な気持ちを伝え合う。きっと長年の付き合いから互いの性格をよく分かっているのだろう。私もランタン亭で仕事を続ければ、あわいの者と素敵な縁を結べるだろうか。  八郎に追い出されるようにしてユウスケが笑いながらカフェを出た。引き戸の隙間から青い風が入り込み、私の頬をそっとなでる。瑞々しい緑の香りと、熱を帯びる湿っぽさ。季節の変わり目の空気だ。  ランタン亭に来て初めの夏がすぐそこに迫っている。
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