昼休み

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昼休み

 涼風に教室のカーテンが揺れる正午過ぎ。大介が購買部から戻ると、有瀬(あるせ)と石川がほとんどカラになった弁当を前に何やら言い争っていた。 「俺は断然、胸派だな」 「お尻だろ」 「はぁ? 尻なんか男にもあんだろが」 「バカ言うな、みんなに付いてるからこそ形の違いに萌えるんだよ。78億のうち、どんだけ好みの尻に出会えるかってのがロマンだろ?」  そうだ、推定世界人口は今年78億を超えた。そして、そのうち男の数は……39億。てのはどうでもいいとして。  大介はふたつ並んだ机に椅子だけを寄せ、石川の萌えの対象にはならないだろう (なったらイヤだ) 尻を下ろした。 「何の話だ?」 「フェチだよ、フェチ」 「フェチって何?」  大介が聞くと、ふたりは同時に 「知らねぇのかよー!?」  と声を上げた。  日頃から、「ちょっとズレてる」と言われている大介である。呆れた顔をしながらも、有瀬が坊主頭のうなじを掻きながら口を開いた。 「そうだなぁ、一言で言えば、萌えるもの、じゃね? つい目が行っちゃうっつーか、見てるとドキドキする、いや、逆に落ち着くって奴もいるか」  その説明に、石川が長めの髪を揺らしてうんうんと頷く。
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