昼休み

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「それは……恋じゃないのか?」 「違う違う、なんつーか、恋ってのは内面込みの好意だろ? フェチはさ、ぶっちゃけ嫌いな奴のでも、いいなぁって思っちゃったりすんだよ」 「なるほど」 「なんとなく分かった?」 「興奮したり、逆に安心したり、持ち主に関係なくいいなと思える、か」 「そうそう」 「俺……おっさんフェチなのかも」  真顔の大介から飛び出した爆弾発言に、有瀬はぽかんと口を開け、石川は(つま)んだ大粒のぶどうを落とした。近くにいたクラスメイトもしんとなり、爆心地から半径5メートルの時が止まる。 「男が好きって訳じゃないけどな……諭吉を見ると興奮する」 「そういうのじゃねえ!!」  ふたりに同時につっ込まれ、「あぁ?」と眉をひそめた大介に、有瀬がお椀の形にした手を胸の前でふよふよと動かしてみせた。 「だからさぁ、女の胸とか尻とか太ももとか、うなじとか鎖骨とか、なんか好きなのあるだろ?」 「女に限定するなら、興奮の度合いは下がるが一葉(いちよう)でも……」 「お前、そのズレた頭を(さつ)から切り離せ」  白けた表情の石川が、ぶどうを拾って口に入れる。 「一葉(いちよう)の泣きぼくろは最高じゃんか」  大介がそう呟くと、分からんちんに頭を抱えかけていた有瀬と石川が、ぎょろりと目を剥いた。
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