21人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「それは……恋じゃないのか?」
「違う違う、なんつーか、恋ってのは内面込みの好意だろ? フェチはさ、ぶっちゃけ嫌いな奴のでも、いいなぁって思っちゃったりすんだよ」
「なるほど」
「なんとなく分かった?」
「興奮したり、逆に安心したり、持ち主に関係なくいいなと思える、か」
「そうそう」
「俺……おっさんフェチなのかも」
真顔の大介から飛び出した爆弾発言に、有瀬はぽかんと口を開け、石川は摘んだ大粒のぶどうを落とした。近くにいたクラスメイトもしんとなり、爆心地から半径5メートルの時が止まる。
「男が好きって訳じゃないけどな……諭吉を見ると興奮する」
「そういうのじゃねえ!!」
ふたりに同時につっ込まれ、「あぁ?」と眉をひそめた大介に、有瀬がお椀の形にした手を胸の前でふよふよと動かしてみせた。
「だからさぁ、女の胸とか尻とか太ももとか、うなじとか鎖骨とか、なんか好きなのあるだろ?」
「女に限定するなら、興奮の度合いは下がるが一葉でも……」
「お前、そのズレた頭を札から切り離せ」
白けた表情の石川が、ぶどうを拾って口に入れる。
「一葉の泣きぼくろは最高じゃんか」
大介がそう呟くと、分からんちんに頭を抱えかけていた有瀬と石川が、ぎょろりと目を剥いた。
最初のコメントを投稿しよう!