ユニクロフェチ

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 入口には本物のユニクロ店員が立っていた。  コロナ対策の一環で検温を行なっていた。 「ユニクロの、こういう気遣いがますます俺を興奮させる!」  正面玄関にはユニクロに入るための列が出来ていた。  俺たちは素早くその列へと並んだ。  逃げる様子のない恭子だが、同じような格好をしている店員を目前にして、何か言われるんじゃないかと、さすがにモジモジしだした。そのモジモジに俺の興奮はなお高まった。 「大丈夫?目、血走ってるよ。」 「んふーっ、なに?」 「鼻息荒い。顔も真っ赤だよ。」  興奮するなって方が無理ってもんだ。  ユニクロの入り口は、夢への入り口はもう目の前なのだから。  俺は体の芯(主に下腹部)の方でほとばしりそうなエネルギーが凝縮されるのを感じていた。そのエネルギーは爆発するのを今か今かと待ちわびているのがわかった。それに合わせ、今なら軽く南極を削れるぐらい体が火照っているのを感じていた。一生分の生命エネルギーが体内で生成されているのかもしれない。とすれば、俺はユニクロデートで天国に召されてしまうのか。それもいいだろう。俺は覚悟を決め、スーパーサイヤ人になろうとする悟空の如く、気合を入れた。  そうして、俺たちの入場の番が来た。まず俺が、と息荒く検温係の店員さんに近づいた。 「失礼しまーす。」 ピッ!  センサー式の体温計測機のディスプレイを見て、ユニクロの店員さんは営業スマイルを強くした。
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