ユニクロフェチ

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 クローゼットの扉を開けて、大きい茶色の紙袋と小さめの段ボール箱を取り出した俺は、それを恭子の目の前に並べ、中身を取り出した。  黒のVネックブラキャミソール、白い美型シルエット・スーピマ・ノーアイロンシャツ、黒いハイライト・スキニーアンクルジーンズ、髪留め、ウエストポーチ、iPhone用イヤホンマイク、ネームプレート、ペン、メジャー、等々。 「ちょっ、ちょっと待って!」  なりきりユニクロ店員セットを取り出し終えた俺は、恭子の大声に応えるかのように恭子を見つめた。  恭子は汚いものを触るように、顔をしかめ、キャミソールなどを次々つまみ上げると呆れた視線を俺に向けた。 「これを…着ろと。」  俺は静かに頷いた。  次に恭子はネームプレートに手を伸ばした。 「これを…身につけろと。」  再び俺は頷いた。  ネームプレートには恭子のフルネームが印字されてある。それを見つけ彼女は小さく悲鳴を上げた。 「俺、ユニクロの店員とデートするのが夢だったんだ!」 「マジ無理。マジ勘弁。」  恭子はネームプレートの自分の名前を俺に見せながら苦い顔をした。
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