第1話「焼ける悲鳴」(2/3)

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 ■    PM3:48 白城マンション・一〇五号室前    《ピンポーン》  「―――――」  「出ないね。」  「留守か……。」  間の悪いことに、坂力 毅の隣の部屋――一〇三号室の住人は外出しているらしく、ブザーを押しても誰も出てこなかった。  仕方ないので、俺と藤鍵は一〇六号室の住人に期待することにした。  《ピンポーン》  「―――――」  ――が、またも反応無し。  「駄目か。」  「う~ん……。」  「やっぱ平日でこの時間帯だと仕事に行ってる人が多いか……。   どうする? 他にも部屋はあるが……。」  「いや、やめとこう。あまりウロウロしたくないし。」  「ん? でも、どうすんだ? 聞き込みができなきゃ手詰まりだろ?」  「んー、ちょっと考えたいことがあるんだ。良い案が浮かんだら連絡するよ。」  「そうか。」  どうやら藤鍵には別の考えがあるらしい。なら、俺はそれに従うだけだ。  「御免な修人。こんな俺のワガママに付き合わせて。」  「いいよ暇だし……。」  今日の調査は残念ながら失敗に終わったが、坂力の住んでいた場所を確認できただけでも良しとしよう。  「じゃあ、また明日。」  「あぁ。」  俺は藤鍵と別れ、帰路に就いた。    (さてと……。)  思ったより時間が余ってしまった。ここに来る途中にコンビニ見かけたし、少し寄っていくのも良いかもしれない。朝食べた分の菓子パンを補充しておかないと、次また寝坊した時に困る。  ……まぁ、なるべくそうならないよう努力はするが。  「にゃぁあ。」  「?」  道を歩いていると、すぐ近くで猫の鳴き声がした。  振り返ると、道の隅っこに黒い猫が居て、じっとこちらを見ていた。首に何か巻いてあるので、飼い猫かもしれない。  (……放し飼いか。)  他人に迷惑かけたり、交通事故や病気のリスクが高まるから家の中で飼う飼い主は増えていると聞くが、まだいるんだな。  しかし……ここで黒猫に出会うとは、何だか不吉だ。  別に迷信を信じている訳ではないが、良い気分になれないのは事実。  「…………。」  執拗にこちらを見つめてくる猫と(しば)し睨み合う。  何だか先に目を逸らした方が負け――そんな感じだ。自分でもよく分からないが。  「……………………。」  ……う。何か……何だろう? 段々と無言で見つめてくる黒猫と裁朶姉が重なり、(とが)められているような気分になってきた。  ……やっぱり……さっさと家に帰るかな。学生鞄を持った状態であちこち寄り道するのもあまり良い顔されないだろうし……。  ――とか色々考えていると、猫は目を逸らし、そしてすぐに走り去って行ってしまった。  「…………はぁ。」  途端、馬鹿らしくなった俺は、溜息を吐き、歩みを再開した。  ちなみにコンビニにはしっかり寄った。    
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