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陽も傾きかけた午後4時、私は駅からの道を自宅へと歩いている。自宅の近所の保育園では、子供たちを迎えに来た、母親が乗ってきたであろう、自転車が数台止まっていた。
この時間帯は、朝送っていった子供を迎えに行く時間であり、家族が再び会える時間でもある。
私は小さな子供の手を引いて、自転車に乗せる親子の姿を、歩きながら目で追っていた。いや違う。どうしてもその姿を見つめてしまうのだ。
「これからの私の人生に、あなたは必要ありません。」
そう言って幼子を2人連れて、妻が出て行ってからもう1年が経つ。
自分の何がいけなかったのか?
もちろん女性関係などではない。あんなことができるのは、金のある奴だけだ。こっちは家のローンに、子供達にお金がかかるのに、そんな時間もお金もない。
私の会社はいわゆる世間でいうところの、ブラック会社であるだろう。
平日も9時から20時まで仕事をし、土曜日も15時まで仕事だ。
もちろん残業代など出ない。
「契約が取れて、月のノルマを達成したらいつでも休んでいいぞ。」
と上司は言うが、そんなことなかなか出来ることではない。
これで月の給料は額面28万円。
もろもろ引かれたら手元に残るのは20万ちょっと。
ボーナスなんかもう何年も貰った記憶がない。
出て行った妻も、子供を保育園に預けて働いていた。
2人で協力すればなんとかできるはずだった・・・
もちろん私も現状を変えようと努力はしていた。
ただ高卒の私では、なかなか条件のあう会社がなく、
面接は受けたが落ちたりと、希望が叶うことはなかった。
そもそもこの拘束時間の長さでは、転職活動も集中してできない。
今の会社はブラックであるが、ノルマを達成しなくても、クビにはならず、給料も減らされれることはない。
とにかく出社すれば給料は貰える、このぬるま湯のような環境に、私は甘えていたのだ。
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