World is Colorful編 EP0「Zero Island」

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≫ December 24th, 11:45 pm, Santa's House  三人でテーブルを囲み、談笑しながら順番にクッキーを食べること数分。皿の上のクッキーは、だいぶ少なくなってきた。  未だ誰もハズレを引かないが、山が小さくなり、奥の方に隠れていた、より変わった色や形をしたクッキーが顔を出したことで、段々と食べるスピードは落ちていく。慎重にならざるを得ない。  「ンン♪」  そんな時、メリーマスが山の中からとても綺麗なクッキーを見つけた。    「Rainbow…….(虹色……。)」  七色のクッキー。どんな味かは全く想像がつかない。一見、不味くはなさそうだが……。  メリーマスはそれを口の中に放り込み、幸せそうな表情で噛み砕いていく。  アズルは少し羨ましそうにそれを見つめた。  「ン!?」  ――が。彼女は突然、青褪め、激しく苦しみ出した……!    「ンン~!?」  《バターン!!》  「hahaha. Merrymas seems to have lost.  (ハハハ。どうやら、メリーマスが引いてしまったようだな。)」  椅子ごとひっくり返ったメリーマスは目を回している。  少し可哀想だが……、これで安心して残りのクッキーを食べられる。  《ゴソゴソ……》  「…………?」  そんな時だった。  外から何かの物音が聞こえ、ネシオとアズルは外に繋がる扉に注目する。  もしや……。  《ガチャ……》  「…………!」  扉が開き、現れたのは、赤い帽子に白い髭、そして、赤い服を着た老人。  アズルは目を見開いた。  その姿は疑う余地もないほどに、サンタクロースであった。  「Real……? (本物……?)」  「Yes.(ああ。)」  アズルは慌ててクッキーを飲み込み、姿勢を正した。  「ho-ho-ho……. Did you like it ? Azul.  (ほっほっほ……。クッキーは美味しかったかな? アズル。)」  腰を屈め、サンタクロースはアズルに尋ねる。  彼は緊張しながら無言で頷いた。  「Do you know me ? (僕のこと分かるの?)」  「Yes, I know your worries.  (勿論、君の悩みも知っているよ。)」  サンタクロースは柔和な笑みを浮かべ、頷く。  「Really ? (本当?)」  「Yeah, I know many other things.  (ああ、他にも色んなことを知っている。)   You haven't broken the statue. And your family is worried about you.  (像を割ったのは君じゃないことも、家族が君を心配していることも。)   Everyone knows. You are a good boy.  (皆、ちゃんと分かっているよ。君は良い子だ。)」  頭を撫でられ、アズルは少し安心した表情になる。  サンタクロースの格好をした大人はこれまで何度か見たことがあるが、目の前の老人が(まと)う雰囲気は、そのどれとも違う。  上手く言い表せない。本物だけが持つオーラを、アズルはひしひしと感じた。  「I'm going to work again. I'll take you home.  (これからまた仕事なんだ。ついでに家まで送ってあげよう。)」  サンタクロースはアズルに手を差し出す。  彼はその手を取り、椅子から降りた。    「Azul. Take this. (おっと、アズル。これを持っていけ。)」  ネシオが手を動かすと、皿の上の余ったクッキーがまとまり、袋に包まれた。  ふわふわと飛んできたので、アズルはそれを両手で受け止める。  「Present.(お土産だ。)」  「Thanks……!(ありがとう……!)」  アズルはようやく曇りのない笑顔を見せる。  「h……. Hey, Merrymas. Time for work. Wake up.  (ふっ……。おい、メリーマス。仕事だぞ。寝てる場合じゃない。)」  ネシオがそう言うと、倒れていたメリーマスが飛び起き、大急ぎで小屋を出ていく。  アズル達もその後に続いた。
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