第一章 事故

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 目が覚めると僕は病院にいた。  娘の安否が、真っ先に気になる。  悪いことをした。  一緒に行こうなんて言わなければ良かった。  ――いつも裏目に出る。  音楽ができない体になんてなっていたら、 ……僕のせいだ。  夏希は音楽が好きだ。  ピアノを弾き、歌を歌った。  僕は音楽を楽しむ彼女が大好きだ。  でも、夏希は大きくなるにつれて、  僕に演奏を見せなくなった。  ――僕はいつまでも見ていたかったのに。  右隣のベッドに寝ているのが夏希だろうか。  それにしては、腕が太く大きい手。  男性のようだ。薬指に指輪が見える。  あれは―――。  不思議な感覚と妙な焦燥感がする。  そんなはずがない!  ……寝ているのは僕?  じゃあ、この体は――。  ベッドの上から、  病室の入口に設置された洗面所の鏡を見つめる。  ――嘘、だろ。   鏡に映っているのは、  『夏希』の姿だった。
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