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目が覚めると僕は病院にいた。
娘の安否が、真っ先に気になる。
悪いことをした。
一緒に行こうなんて言わなければ良かった。
――いつも裏目に出る。
音楽ができない体になんてなっていたら、
……僕のせいだ。
夏希は音楽が好きだ。
ピアノを弾き、歌を歌った。
僕は音楽を楽しむ彼女が大好きだ。
でも、夏希は大きくなるにつれて、
僕に演奏を見せなくなった。
――僕はいつまでも見ていたかったのに。
右隣のベッドに寝ているのが夏希だろうか。
それにしては、腕が太く大きい手。
男性のようだ。薬指に指輪が見える。
あれは―――。
不思議な感覚と妙な焦燥感がする。
そんなはずがない!
……寝ているのは僕?
じゃあ、この体は――。
ベッドの上から、
病室の入口に設置された洗面所の鏡を見つめる。
――嘘、だろ。
鏡に映っているのは、
『夏希』の姿だった。
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