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「何か用ですか?」
まだ少し笑いながら首を傾げた女子。
「いや、毎日そこに居るから何があるのかなって気になって…その横に座ってもいい?」
特に何も考えていなかったことに気づいて俺はとりあえずその女子の見ている景色を見てみたいとそのまま口にした。
「特に何かある訳でもないけど…どうぞ」
「ありがとう」
一応お礼を言って隣に座る。
うん。何てことはない。
土手の下に道路があってその向こうには家とか田んぼが見えるくらいだ。
「何もないでしょう?」
「うーん。あ、あの向こうに見える高校あるだろう?あれ、俺が通っている高校なんだ」
本当にそれくらいしかない。
「へぇ…」
まぁ、そんな反応になるよな。
「…おもしろい?」
俺はすぐに飽きてしまって、もう目の前の光景に興味はない。
「別に…車も自転車もみんな忙しなく走って行って大変だなって思うくらいで…」
女子は遠くを見ながらのんびりと言う。
「毎日そんなことを思っているの?」
「まぁ…そうね」
会話が続かない。
「…あ、名前!聞いていい?高校生…だよね?何年?」
思い出したように聞くと、女子はちらっとこっちを見てまた遠くの景色に視線を戻した。
「橘優希。高二」
「タメか!しかも、一緒の名前?俺は元気勇気!の勇気!どんな漢字書くの?」
「…優しい希望」
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