夕暮れはきみと

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あれ?俺、ぐいぐい行き過ぎか? ちょっと引かれている? でも、俺の口は止まらない。 「なんか同じ名前でも綺麗だね」 「そんなこと…」 髪を耳に掛けているから顔がよく見えて赤くなったようにも見えるけど…周りも赤いからよくわからない。 「どこの高校?あんまり見ない制服だけど」 「県外だから…」 「へぇ、それで見たことないんだ!」 会話がまた途切れる。 こういう時、何を話したらいいんだろう? 「…部活帰り?」 考えていたら向こうから話してくれた。 「うん。サッカー部」 「へぇ…」 そっちは?って聞こうとしてやめた。 県外ってことは電車通学だろ? いつもこの時間にはここに座っているってことは部活とかやっていなさそうだから。 「帰ろうか」 言われて辺りを見回すといつの間にか薄暗くなり始めていた。 「家、近いの?」 「ここから歩いて15分くらい」 橘は立ち上がって膝に乗せていたかばんを肩にかける。 「それなら俺の自転車の後ろ乗っていかない?暗くなってきたし送るよ」 びっくりしている橘の手を握って笑った。 「え…」 戸惑っている橘の手を引いて階段を降りる。 かばんを前カゴに入れて 「ほら、乗って」 笑いながら促すと橘は躊躇いながら荷台に横座りした。 「こっち…でいい?」 進行方向を指して聞くと、橘はこくりと頷く。 「ちゃんと捕まりなよ」 俺は勢い良く自転車を漕ぎ出した。
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