第1話 ネコのミイラ

1/5
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

第1話 ネコのミイラ

「ラザロよ、墓より起きて、立て」        〜ヨハネ伝11章〜 *  フランスの小さな博物館。『エジプト特別展』の最終日、社会科見学の小学生に女性学芸員が説明をしている。 「これが古王国時代のネコのミイラです」  子どもたちが恐る恐る近づく。ネコ頭の女神バステトが美しく描かれた棺の蓋は外され、中に亜麻布で包まれた小さなミイラが見えた。 「死者が(よみがえ)るためには肉体が必要であるとされ、聖獣であるネコも大切にミイラにされました」  西陽が差し込む窓の外は、夕焼けに赤く染まっていた。 「エジプトでは、太陽の沈む西の方角は死者の世界だと考えられていました。太陽神ラーは日没とともに死に、日の出はその再生であると・・・第3王朝ジェセル王の宰相は、死者を蘇らせたとも言われています」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!