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窓辺に若い男が立っていた。閉展のためエジプトの博物館から派遣された、褐色の肌に大きな瞳をした美しい青年は、流暢なフランス語で言った。
「博士は説明がお上手ですね。子どもたちの心を鷲掴みでしたよ」
青年は左胸に拳を当てた。2人は研究室に向かった。
「心はここにあるのよ」
博士と呼ばれた女性学芸員は、鼻の穴を指差した。青年は、苦笑した。
「博士はエジプト人を少し馬鹿にしていませんか?迷信に浪費した愚かで非科学的な民族だと」
「そうかもね。だって、何の役にも立たないピラミッドやミイラを延々と作り続けたなんて」
「博士、あれは?」
青年は笑って、研究室に積まれているものを指差した。
「数年前に通販で買った健康器具。真ん中を持ってブルブルすると二の腕がほっそりするって」
「ほっそりしました?」
「全然・・・だからもうCMもやってないわ」
「効果がないなら、そんなもの買う人はいなくなりますね」
「そうね。エクソサイズのDVDも、痩せるってサプリも」
「でも、もし一度でもちゃんと効果があったら?」
「そしたら、ずっと売れ続けるんじゃないかしら」
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