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第2話 ヴァンプ
オレンジ色の夕焼けが徐々に暗くなり、窓の外はまるで血を流したように真っ赤になった。ルーマニアの深い森に囲まれた地方病院、誇らしげに赤十字が掲げられていた。
看護師のイレーナは日勤を終え、交替の準備をしていた。赤く染まった窓をしっかりと閉め、さらに暗幕を下した。太陽光モニターの数字がほとんどゼロになり、デジタル時計が横に表示された日没時刻と同じになった。
『申し送り室』に向かっていると、同僚が声をかける。
「イレーナ!カラー忘れてる!そんな美味しそうなうなじを見せたら、絶対インシデント発生だよ!」
イレーナは壁のフックからカラーを取り、ほっそりした首に巻くと、同僚を追った。
『申し送り室』はナースステーションの隣にあり、透明なアクリル板で2つに仕切られていた。それぞれ入口と出口があり、日勤者が部屋に全員入ると入口はロックされる。しばらくするとアクリル板の仕切りの向こうの部屋に夜勤看護師が入ってきた。
「タチアナ、夜勤よろしくね」
イレーナは手を振った。タチアナと呼ばれた夜勤看護師が微笑んだ。
「お疲れ、イレーナ」
彼女の口元に、尖った長い犬歯が見えた。彼女たちはヴァンプなのだ。
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