雨が嫌い

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雨が嫌い

短い夏が終わった。 宇宙クラゲの一家は食欲の秋を楽しんでいる。 けれど、パママンパの107番目の子供――ピカリだけはちょっとちがった。 今日も外は雨降りだ。 食堂の屋根から時々、ぴちゃん、と水滴が落ちてきて料理に入ったりする。 ピカリはそれがすごく嫌なのだけど、みんなはあまり気にしていないみたい。 ピカリはこけ(、、)のソテーを食べながら、はぁ、ため息をもらす。 ため息をついてから、ピカリはしまった、と思った。 「ピカリ、どうしたの?」 思った通り、プックンが顔をのぞきこんできた。 つねにのんびりモードのプックンに、ピカリはいつもイライラしてしまう。 「べつに」 ピカリはムスっと答える。主食のこけ(、、)にずぶずぶとフォークをつきさした。 プックンが、ははぁ、とうなずく。 「ピカリは雨が嫌いだものね」 嫌いなのは雨だけじゃない、とピカリは心の中でこっそりと言った。 「ね、ピカリ、今日は外に行けないから、お人形で遊ぼうよ」 「プックン、今、いくつ?」 「ん?ピカリと一緒だよ。ぼくたち双子じゃない」 「だから、もうすぐ10歳になるのにお人形ごっこなんて、はずかしい」 ピカリはツンケンと言うと、香ばしいこけ(、、)を口につめこんだ。 プックンは首をひねって不思議そうな顔だ。 「ポール姉さんもいっしょだよ。姉さんはもう16歳だよ」 「うるさいなあ。ごちそうさま」 ピカリはお皿を持って立ち上がった。 横目でプックンを見ると、プックンは少し悲しそうな顔をしていた。 ピカリの胸がチクリと痛む。 (ううん、あたしは悪くない。プックンのおせっかい焼きめ) ピカリはすたすたと流し台に歩いて行った。 お皿を洗って、嫌な気持ちは泡といっしょに流してしまおう。 ピカリは流れる泡を見ながら、せつない気持ちになった。 (雨が、あたしの心もきれいにしてくれたらいいのに)
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