1/4
前へ
/14ページ
次へ

 音楽室にはキィ子がいた。  キィ子はオレらの担任。音楽教師で、オレらのバンドのキーボード兼バックコーラス担当。おばちゃんだが美人で、オレはちょっと憧れている。白いブラウス、黒いスリットのタイトスカート、小さなティファニーのネックレスにディオールのプアゾンの香り・・・ゴクリ。中2男子とは、あまねく年上の女性に惹かれるお年頃なのだ。  キィ子は頭を抱えていた。偏頭痛か? 「どうしたんですか?」と、オレ。 「もうすぐ文化祭でしょ」と、キィ子。  いまだコロナウイルスパンデミックの真っ最中、少しずつ日常生活が戻りつつあるとは言うものの、例年のように学校をご父兄に開放して教室で展示したり、講堂でライブしたりってのは、難しそう。先生たちは頭を悩ませているんだ。  本来なら、オレらのバンドのデビューライブになるべきイベント、なんだけどな。これが高校生くらいになればライブ配信とかできるんだが、今までスマホやゲームをほぼ禁止していた手前、今更方針転換もしにくいらしい。まあ、今学期から校長が変わったわけだから、この際解禁したらどうでしょう?野球部やサッカー部なんかより、スマホいじってゲームしてるオタクの方が断然成績いいってこと、そろそろ教育者の連中は気づくべきだろ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加