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ああ。ちょっといいかな? この日誌を開く前に、僕からみんなに聞きたいことがあるんだけど。
ええと、それは、あれだ。みんなは、どんな青春を過ごしたのかな? 変な質問だってことは分かってるよ。でも聞きたいんだ。みんなの青春はどんなものだった?
僕の青春はこの日誌だ。『七不思議』を解こうと足掻いた高校三年生の一年が僕の青春の瞬間だった。
みんなの青春は?
警官になりたくて部活に励んだ?
護ってくれるお爺さんに苦笑いをした?
恋人と手を繋いでコンビニに出掛けた?
裁かれない悪者の最期を見届けようと正義の味方になった?
傘を持った人に恋をした?
素敵な恋人たちと同居した?
砂時計の中で終わらない夢を見た?
同志からメッセージは届いたかな?
どれだけ友人と一緒に好きな動画を探した?
真っ暗な地下通路を駆け抜けた?
赤く染まった町を一人で見送った?
あやかしと肩を組んで晩酌した?
日だまりの中で昼寝をした?
それとも、僕みたいに七不思議を廻り続けた?
ねえ、教えて欲しいんだ。
みんなの青春は、今でも色鮮やかなまま一ページを埋めているのか。
丁度太陽が沈みかけているね。昼と夜の境の時間、青い空があっという間に緋色を経て群青色に交代する時間。『七不思議』みたいな怪異を語るにはこんな時間が相応しいと僕は思うな。
僕の一生はさ。ずっと青空の下にあったと思うよ。ずっと変わらない青空で、つまらなかったけど不満ではなかった。その中でとびきりの『青』が青春ってわけ。
青色が過ぎて黒色が全部を被う前に、僕の青春の話が終えられたらいいよね。
もちろん、その後の黒色の時間は七不思議を語らせてもらうけど。
じゃあ、始めようか。
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