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よし。まずはこの日誌のことを知ってもらおうか。
ここに一冊の日誌がある。ほら。ぱららららら~、ってね。書いてきたのはもちろん『七不思議調査委員会』のメンバーたち。一番最初のページなんか、もうどんだけ昔だよって状態だよね。
委員会の詳しいことはわかんないけど、メンバーはいつも七人。
つまり、一人一個の不思議を調べてこいって話なんだよね。もー、何でみんなで調べるってことしないのかなぁ。
日誌も、その年の一番最初のページにはメンバーの名前が書き出されている。そして、その次のページから本文が始まるんだ。○年×月△日~って感じで。もちろん担当の名前も書かれてる。
大体は見開きで一個の不思議について書いてあるのかな?いきなり三つ目とかから七不思議が始まると変なんで、順番になってる。多分、あらかじめページを空けておくんだろうね。たまに真っ白なページとか、やけに文字が詰まってるページもあったりするよ。内容は…僕たちの一年を話すからいいか。
でさ。その町の七不思議なんだけど、なんかおかしい気がしたんだよね。委員会に誘った『彼』のこともあったんだけど、一番おかしいのはこれ。何年も委員会が立ち上がって、その度に七不思議全部が調べあげられているんだ。その町の七不思議っていうのはね、
一つ、歩道橋
二つ、交差点
三つ、猫ノ集会
四つ、化け物行列
五つ、ほこら
六つ、鏡
そして、七つ、学舎。
毎年毎年、この七つが調査されて日誌に記されているんだ。
普通さ。七不思議っていうのは六つ目までわかったらやっと七つ目が出てくるってスタイルなんだよね。ほら、僕らの時もそうだろう? この町のもそうなんだよ。
五つ目までは大体終わってる。六つ目は…半分くらいかな。七つ目はタイトルと日付、名前だけでほとんどの年が空白になっているんだ。
それならいいんだよ。ああ、わかんなかったんだなって。一年終わっちゃったんだなって。
でも、七不思議は毎年調査されているんだよね。ほら、見てみて、ここ。この年、一番最初の委員会なんだけど、一つ目から始まって三つ目まで日誌が書かれている。後は空白。で、次の年。また一つ目から始まっているね。続けて二つ目、三つ目。四つ目はまたわからなかった。更に次の年。また一つ目。今度は四つ目がわかったみたい。五つ目は空白。
そう。繰り返しているんだよ。一年経ったらリセットされたかみたいにまた始めから。前年までの日誌はちゃんと残っているはずなのに、わざわざ一つ目からやり直すんだ。
僕は、これは変だなって思った。
毎年繰り返されている七不思議の調査。僕たちの前には、一回も七つ目が完成されたことはない。
だからって一つ目からやり直す必要はないだろ? わからなかった部分だけ追加で調べていけばいいだろ?
でも、『彼』は僕たちの前でこう言ったんだ。
「よし。じゃあ、今年も七不思議一つ目からいってみようか!」
こうして僕たちは七不思議を『一つ目から』調査することになったんだ。
ほんと、おかしな委員会だったよ。今思い出すと、それなりに意味があったんだとは思うんだけどね。
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