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やあ、みんな。今度は僕の番だ。
これは、言ってみれば予行練習、みたいなものだったのかもしれない。
長い話になるよ? 最後まで聞いていてね。
季節は春。もうすぐ桜の花も散るだろう頃に、僕はその部屋の戸を開いた。
白いワイシャツの上に着たブレザーが役目を終えるまであと一年。高校三年生に進級したばかりの僕は、友人からある話に誘われた。
「せっかくの高校生活最後の年なんだから、変わったことやろうぜ」
彼が誘ったのは一年間だけの委員会活動。進路も、就職も、勉強も、ギスギスした人間関係も忘れて、まっさらな白紙で何かをしないかと僕に話を持ちかけた。
今考えるとね、おかしな話だったよ。僕は彼とはそれ以前に話した記憶がないんだ。だから、僕が彼を、彼が僕を『友人』と呼ぶのはおかしい。
彼に声をかけられた時点で、僕のこの話は始まったんだ。
戸の横にはこんな看板が掲げられていた。
『七不思議調査委員会』
どこかで聞いたことがないかい?
そう。僕たちが小学生の頃に立ち上げた委員会と同じ名前だよ。
六年ぶりになるかな。僕は、七不思議の解明に乗り出した。僕たちの地元の七不思議はまだ解明できていないものも残っている。まあ、それも時間の問題なんだけどね。桜ヶ原の七不思議、七つ目の『同窓会』は、今僕たちが体験しているんだもの。
でも、高校生だった僕はそれがすごく歯痒かった。いつかはわかることでも、その時わからなきゃ意味がないことってあるんだよ。僕はその『いつか』を待つことができなかった。でも、桜ヶ原を離れてしまった僕には七不思議に近づくこともできない。だから惹かれたんだろうね。
僕は七不思議調査委員会のメンバーとして名前を書き加えた。
戸を開いた先には僕を含めて七人の生徒がいた。その中にはもちろん『彼』もいたよ。彼は僕を部屋に招き入れて
「来てくれると信じていたぜ」
と言った。
友人に誘われたんだから、来るに決まってるだろ? その時の僕はそう思っていた。親しい以前に校内で見たこともないっていうのにね。
さて、みんな。これを見てくれ。
ここにあるのは、その委員会の日誌だ。なんでここにあるのかって? そりゃ、僕が持ち出したからに決まっているだろ。
当時あったはずのその委員会はもうないんだ。七不思議は、解明された。僕たちの代を最後に、委員会は二度と立ち上がることはないんだよ。
なら、記念に持ってきてもいいだろう? せっかく僕たちが貴重な一年を費やして完成させた記念の日誌なんだからさ。
この日誌の中には当時の僕たちの手で解明された『七不思議』のことが書かれている。
もうわかっただろ?
僕はこの『同窓会』でとっておきの話として『七不思議』を語らせてもらうよ。
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