第一章

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4回目の占いの時、彼とはそういう関係になった。 すでに、占いが目的で来ているのではない事にリコも気づいていた。 彼は素朴で優しく、話している間はもちろん楽しかったが、無言で過ごしていても苦にならない。 東京の家族が帰ってきて欲しがっているらしく、どうするべきがしばらく悩んでいた。 しかしある日突然、一緒に東京で暮らさないかと言われた。 多少戸惑いはあったが、東京に対する憧れがあったし、何より彼のそばに居たかった。 迷う事なく、リコは彼についていく事に決めた。 ハーブティーを飲み終えたところで、ドアの鍵を開ける音が聞こえる。 彼が仕事から帰ってきたのだ。 「ただいま。」 リコの耳に馴染んだ、優しい声がする。 「お帰りなさい皇一さん。」 リコは、皇一と出会う一日前に、ある女のおかげで知ることとなった愛しい名前を口にする。
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