第一章

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午後3時。定時に仕事を終えるとエプロンを脱ぎ、車を走らせる。ここ数年通い慣れたエステサロンに行き、施術してもらうためだ。 来週は、婚活サイトで紹介してもらった男と「お食事」に行く予定がある。 約2年前、婚活パーティーで知り合った歳下の男に恋をした。 自分なりに努力はしてみたが、結局彼との間には何も起こらないまま、彼は実家のある東京へ帰ってしまった。 実家の母親の体調不良を心配してのことだった。 「やっぱり実家に戻る事にしました。先日は相談に乗ってもらってありがとうございました。信子さん、お元気で。」 彼からの最後のメールに信子は返事をしなかった。 あれから、婚活サイトから数人の男性を紹介してもらい、食事までしてみたがそれ以上に進展した男は1人もいない。みんな30代から40代前半の男だったが、みんな自分に対して引いてしまっているような気がした。 1人の男にこう言われた。 「信子さん、できる上司って感じがして近付き難いです。」 未だに男はバカな女が好きなのだろうか。 信子はもうすぐ53歳になる。 不安で胸が押しつぶされそうになる。
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