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いつも通りにエステの施術をしてもらうと、ピカピカの顔のまま信子はショッピングセンターに寄る事にした。
毎日職場に持っていく弁当箱が欠けてしまったので、買い直すためだ。
いつ来てもショッピングセンターは混んでいる。
夜の7時前。家族連れが多く、小さな子供も意外と多い。
ふと、信子の前で小さな女の子が転んだ。泣き出しそうだが、信子はどうしたらいいか分からない。そこへ10歳くらいの兄らしき男の子がやってきて女の子が起き上がる手助けをした。
膝をさすってあげる兄と泣きべそをかき続ける小さな女の子。
何とも言えない、切ない気持ちが信子を包む。
何もできずに立ち尽くしていると、母親と父親がニコニコと微笑みながらやって来た。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんが起こしてくれて良かったね。」
父親が女の子を抱き上げ、母親は妹思いの兄を労う。
ふと母親が信子の顔を見てギョッとした。
「江東、さん?」
信子も心底ギョッとした。
驚いて母親の顔を見ると、確かに見覚えがある。
そうだ。記憶よりも少し歳をとっているが、銀行員時代の部下だ。
大卒で入って来たくせに一向に使い物にならず、寿退社をしていった。
段々と記憶が蘇る信子に向かって、彼女は言い放った。
「お久しぶりですね。主人と子ども達です。江東さんは、まだあの銀行でバリバリ働いてるんですか?ご結婚は?お子さんはいらっしゃるんですか?」
いきなりの質問に呆気に取られて信子は返事ができない。
「お母さん。」
男の子がその女に声をかけた。不意に我に返ったような顔をし、女は信子に一瞥をくれると、家族の元へと戻っていった。
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