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信子は、久しぶりに皇一にメールを送った。
何年ぶりだろう。
自分も歳を重ねたが、同じだけ皇一も歳を重ねている。
自分の生活に変化があったように、皇一も色々とあっただろう。
別に彼の近況を知りたかったわけではない。
でも、メールの返事は当たり障りのないものだった。
拒絶もされていないが、歓迎もされていないのが文章から伝わる。
別に今更彼と会いたかったわけではない。ただ、懐かしさからメールを送ってしまった。
信子はため息をつきながら紅茶を飲む。
あの日。昔の部下からショッピングセンターで屈辱を味合わされ、その帰り道に車で人をひきそうになったあの日から、信子は考えが変わった。
誰でも良いから側にいてほしい。
信子はそれから婚活サイトで紹介された5つ程も年上の男性と数回デートを重ね、結婚した。
別に彼のことが特段好きだったわけではない。彼も特に信子に愛情がある様には見えなかった。
2人の共通点は「結婚したい」という事だけ。
お互いによく知りもしないまま、それでも一緒になれば愛情が湧くかと思い一緒になった。
だが、やはり上手くはいかなかった。
違う。
お互いに気を遣いながら上手くやっていたのだ。一緒に暮らすルームメイトのように。
家事は洗濯を信子がし、掃除は主に彼がした。料理は平日は信子が、休日は彼がした。
そうやってずっと暮らしていけないことも無かったのかもしれない。
だけどある日、2人とも結婚ごっこの虚しさに気付いてしまった。
最初に言い出したのは彼だった。
「もう、良いんじゃないかな。」
唐突な発言だったが、信子にはすぐにピンときた。
「そうね。もう充分だわ。」
結婚するのも簡単だったが、離婚するのも簡単だった。
ただ、2人ともすり減っていた。
一緒に暮らしたのは9ヶ月ほどで、体の関係は一度もなかった。
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