終わった僕らに恋はない

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「じゃ、僕はこっちで」  天月に背を向けた。  小さな山の上にある学校の、二百段ちょっとの階段を降り切った裏門。駐輪場には気の早い蝉が、その夏の最期を飾ろうとしている。 「あれ、今日は一緒に帰ってくれないんですか?」 「ああ、少し用事があるんだ。それじゃあ」 「それじゃあ、です」  二股に別れる道を、僕たちは飾り気のない「さよなら」を置いて歩き出した。  今の彼女とは、もう一緒に帰れなくなってしまった。  それは彼女が変わらなかった事を意味していて、僕が変われなかった事を意味している。 『また一緒に、探してくれませんか?』  その答えに、僕は頷くだけでよかった。  小さな体に大きな夢を描いて。自分が一番辛い世界を夢見る天月を、そばで眺めているだけで。  人はその感情を、恋と言うのだろう。  真夏の蛍みたいに淡くて、砂場で見つけたきれいな石みたいに小さなその感情を、恋と呼ぶのか。それとも罪悪感と呼ぶのか。  僕はまだ、迷ってしまっている。
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