僕らはただの友達で

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「このままって?」 「苛められたままってことだよ」 「そりゃあ嫌ですよー。君が優しいから、余計に」  遠巻きに眺めるイジメっ子達を見て、天月は微笑んだ。  挑発でもなく、軽蔑でもない。何か理解できない、けれど整合性のある笑みだった。  きっと人は、理解できないそれを、怪物と呼ぶのだろう。  そして怪物は、拒絶される運命にある。  翌日から、イジメはピタリと止んだ。  まるで、イジメその物がなかったみたいに。  イジメっ子であった女子達も、何事も無かったかのようにバラバラになって、主犯格は不登校になって。  中には天月と会話しようとする奴さえいた。 「ねえ、私あの子達に嫌がらせされてませんでしたっけ?」  怪奇現象に遭遇したみたいに、怪訝な顔をした天月が話し掛けてきた。 「確かにそうだね」 「じゃあ、なんで急に馴れ馴れしくなったんでしょう?」 「さあ。もしかしたら、罪悪感があったのかもしれない」 「ひょっとして、君が何かしたんですか?」 「まさか、僕にそんな勇気はないよ」  天月詩乃、と少女は名乗った。  思えば、この時からだったのだろう。僕が彼女を気にかけるようになったのは。  人は見たこともないもの、経験したことのないものに興味を覚える。僕の場合は、たまたまそれが天月だっただけ。  それなのに気付けば、いつも視界には彼女がいて。  全く違うことをしていた時でも、授業中でも。前を向いても後ろを向いても、気付けば僕の視界には、いつも天月が映っていた。
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